にんにくの醤油漬け
10年くらい前に、まだ生きてたばあちゃんが漬けたものらしい。
- ニンニクの皮を剥く
- 醤油に漬ける
- 10年待つ
といったところらしい。残念ながら僕の所についた時点でもう醤油部分はなく、ニンニクの塊だけがごろごろとある。
食感はカリコリ。このまま食べるとしょっぱい。でも優しい甘さがおいしい。
刻んで使うとニンニクは突然活躍をはじめる。
みじん切りにして使う。
チャーハンは素敵だった。肉なしチャーハンをおいしく感じたのは産まれて初めてだ。
レタスのサラダに混ぜたのもよかった。サラダとニンニクはよく合う。
豆腐にもかけてみた。長ネギの代わりなのだけれど、醤油も不要だった。ビールがすすんだ。ばあちゃんの思い出も肴にして、いつもより酔った。
まだ試していないけれど、うどんやラーメンにもいいだろう。
いま書いていて思い出したが、ばあちゃんちの裏にはニンニクが生えていた。
春になったら、僕もニンニクを植えてみよう。そして大きな瓶で醤油に漬けよう。醤油漬けニンニクを食べるたびにばあちゃんを思い出すだろうし、僕が死んだら子供達が思い出してくれるかもしれない。
「墓」「埋葬」というシステムが好きになれない。死体は土に還って養分になったほうがよいと思うし、死んだ肉体の燃えカスとその入れ物に手を合わせても強い感慨は湧かない。
僕は思い出を墓標としたい。たくさんある思い出のうちのひとつであるニンニク醤油漬けは、僕にとってのばあちゃんの墓なのだと思う。
仏壇や墓に手を合わせておがむことをしない僕を見て、ばあちゃんは嘆いていた。ちゃんと拝みなさいよ、と何回か言われた。僕は、ばあちゃんが死んだらちゃんと手を合わせてお参りするよ、と答えた。約束は守っている。