「川の始まりを見たい」と子供が言った。


「川の始まりを見たい」と子供が言った。
その子は、川の終わりは知っている。川を下って海まで出る体験も何度かしているので、じゃあ始まりは?、という疑問が自然に湧いたのかもしれない。

仕事やその他のイベントでなかなか時間が取れなかったのだが、夕方4時までに家に帰ってくれば大丈夫、という日曜日に、父子二人ででかけてきた。
秀岳荘で札幌の地形図を購入し、ぎりぎりまで登山道のある市内の川を探した。出発前に、地形図上にある公園や施設や上ったことのある山や親せきの家などと目的地を説明した。2年生にはまだ早いかと思っていたけれど、等高線から山や川の位置がわかるらしく、教えるこちらが逆に驚いた。


スタート地点。標高は低くても一応登山道なので積雪も覚悟していたが、日陰にも雪はほとんどなかった。



有名な山ではなく来る人もそれほど多くないと思うのだけれど、道が適度に整備されていて快適に歩けた。何箇所かあった木の橋も、立派ではなく、しかし壊れているわけではなく、隙間から踏み外さないように注意しつつ冒険気分を味わえる、小学生の半日遊びにはぴったりのコースだった。


杖にする木の枝を探したり、キノコや松ぼっくりを拾ったり、川を覗きこんだり水に触れたりと好奇心はつきない。しかし、「それはOOOというキノコで食べられるんだよ」、などと教えられる知識が親の僕に無く、ちょっと申し訳ない気がした。



小さな支流がいくつもあり、それにより川が少しずつ太くなっていくことを学んだ。川下りでも体感しているはずなのだけれど、下るのと登るのとの違いと、艇の速さと自分の足で一歩一歩進むのでもやはり大きく違ったのだろう。支流にも踏み入り、獣が歩いた跡や、支流もやはり水を集めて少しずつ流量を増やしていくことを身を持って知ってくれた。


本流に戻ってまた源流を目指す・・・けれど気ままに遊びながら。これから子を持つ人に先輩親として伝えたいことは、こんなときにイライラしてはいけないということ。できる限り子供の好奇心につきあって、待ってやれると良い。


登山道が川から離れたので、沢歩きに。歩行を阻む木は葉が落ち、葉は落ちないが笹の勢いも弱く、泥の上には落葉が積もり、源頭探しの山歩きにはとても良い季節だったようだ。しかも寒いからもう蚊もいない。

つづく


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2012年5月追記
続きを書くつもりだったけれど忘れていた。
この後で川は無がなくなる場所に着き、そこで落ち葉と腐葉土をそっとよけて、ポタポタト流れる川の始まりを見つけました。口をつけて直接水を飲み、子供の好奇心はすっかり満たされた。
好奇心が満たされたと言う言葉では表せない満ち足りた気持ちが表情だけでなく体全体からみてとれ、一緒に行って良かったと心から思いました。
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