ニワトリを買ってきた

僕の家族は肉を食べる。
僕自身は「肉を食べない」と決めたが、僕が扶養している家族に肉を与えることはやめていない(少ないけど)。


家族で外食する機会もたまにある。家族は’普通の’肉入り料理を食べ、僕はサラダ(肉魚抜き、ドレッシングなし)とライスのみ、とか、ビールと枝豆のみ、といった、肉なしのものを食べる。


家族が食べている肉を購入(注文)するために払うのは、僕のお金だ。僕は働いて得たお金で家族に肉を買い与えている。自分は食べないのに。

子供たちはおいしいおいしいと肉を食べるが、よく言う、「命をいただいている」という実感を持っていない。料理のなかの肉片は単に「肉」であり、それが生きて動いていた頃の痕跡は見当たらない。
「感謝して」、とか、「いただきます」、と口で教えても。それは上辺だけのもので、そもそもそれを教える大人の方でさえ、本当にそれを理解しているのか疑わしい。僕も例外ではなく、口で何度も話して聞かせても、子供たちに伝え切れていないという空振りの感触が常にあった。



今日、子供たちと訪問した先ではたくさんの鶏を飼っていた。平飼い、というのだろうか?、狭い籠のなかでギュウギュウなのではなく、ビニールハウス内の地面の上(外はまだ雪がたっぷり積もっている)で走り回っている元気な鶏たちだった。その鶏たちが産んだ健康的な卵はおいしくて人気があるらしい。
子供たちはヒヨコを触らせてもらったり、鶏に靴をつつかれたりして喜んでいた。(外の雪がくつに少し乗っていて、その雪を食べるためにつつくらしい)





廃鶏を売ってくださいとお願いしたところ、500円で2歳ほどの雌鶏を譲ってくれた。足を縛ってもらい、段ボールに入れて、車で家まで運んだ。安くて驚いたが、他の人に売る時は捌く手間賃が入っているから、と教えてくれた。




子供たちは初め怖がって、触ることができなかった。抱いて見せ、少し触らせて、そしてなんとか手で抱けるようになった。普段から動物と触れ合う機会を与えていないなあと反省した。
これから殺して食べると伝えていたので、この時点で、可哀そうにと姪2名が泣き始めた。
風呂場に移動。子供たちの見守る前で、足を縛ったままの鶏の首にナイフを入れた。「顔の横の、赤いトサカと毛の間、人間で言うと耳の下ぐらいを後ろから前に切るといいですよ」、と養鶏場では教えてもらってきたので、その通りにやってみた。少し暴れて血が少し跳んだ。首を切り落としてからも、ビクンビクンと体が動いていた。
首を下に足を釣り、血抜き。「15分くらいで抜けるし、血が出なくなるからすぐわかりますよ」と習ったが、正にその通りだった。
初めて自分で鶏を殺したのだけれど、予想していた躊躇いはほとんど無く、子供に解説しながら淡々と作業できたことに安堵した。いつもは金を払って他人にやってもらっていることを、自分の手でやった、というだけのこと。
また同時に、肉を食べないと言う選択をしてよかったな、とも実感した。手の中で失われていく命は、切られた大根と同じではない。植物だって生きている同じ命だから菜食主義は偽善なんだ、と断じる人は、このニワトリの温かさと血を知っているだろうか?
羽を抜く前に、最高温度に設定したシャワーで湯をかけた。子供たちと一緒に、熱で抜けやすくなった羽を抜いていくと、だんだん見慣れた、肉としての鶏が姿を現してきた。泣いた二人は羽むしりもほとんどできなかった。泣かない子は羽を抜きながらだんだん楽しくなってきたのか、又は悲しさと同時進行の躁状態だったのか、とにかく楽しそうに話もしながら作業を進めた。
途中切った首で遊んだ7歳に、おもちゃじゃないよ、と注意した。



手で毛を抜いた状態の鶏。この後、少し残った細い毛をガスの火で炙って燃やした。
解体作業も子供の目の前で。泣いていた二人も興味しんしんで、笑顔も見せながら見物していた。
調理も僕がした。ハーブソルトをまぶして、オリーブオイルで蒸し揚げにした。味見しないで肉や魚料理をちょうどいい味付けにする技能が、妻や母には好評だ。
しかし、調理は子供にやらせればよかった。

もしも可哀そうだとかショックだとかで食べられない子がいたら、ぼくが食べる姿を見せよう、と考えていたが杞憂だった。どの子も、おいしいと言って食べていた。普通の鶏よりも固いらしい。

10歳「最初は怖くて泣いたりしたけど、羽を抜いて少し慣れたのがよかった。食べてみた肉は、途中で見た鳥の顔みたいな味がした。」

8歳「初めは、自分で殺したお肉だから食べづらかったけど、食べたらおいしかった。」

11歳「いろいろ感想はあるけど・・、初めにニワトリを抱っこしたときに、これからこの人殺されちゃうの知らないんだな、とか、うちのインコもこういう風に食べられたらどうしようとか思って泣いちゃったけど、・・そして、泣いて、なんでこういうことさせるんだろうって泣いて、だけど今は、こういうことさせてくれてどうもありがとうございましたってかんじ。」

7歳「おいしかった!! あっ、かわいそうだけどー、おいしかった。毛を取ったらお肉の形になって、小さい毛を燃やしたらお肉のいいにおいがした。」

10歳「おいしかった。始めはかわいそうだったけど、ニワトリの人生ってこうなんだなってわかってよかった。」


子供たちが食べ終えた皿を見て、さっきまでは生きていたのにな、と少し寂しさを感じた。子供たちはそれぞれに、もっと大きな感情に心を動かされたに違いないし、そしてこれを成長の糧としてくれることだろう。



菜食者が子供に魚のさばき方を教える
自分で殺しているわけではないから、買って食べてもいい
雑記イロイロ

Vegan Wrestler Chef Couple ヴィーガン レスラー シェフ カップル」>「☆チキンストーリー④☆Chicken Story4☆」 http://vcouple.exblog.jp/18060096/